2016年10月9日日曜日

外食券が必要だった時代

 外食券という代物があった時代を知る人は、もう結構な年寄りです。私が大学に入った1954年(昭和29年)には、米や外食券がないと外食が出来ない時代は終わっていました。それ以前には、出張時にも米を持って行かなと宿でごはんが出してもらえない時代があり、靴下にコメを入れて目立たぬように鞄の下に詰め込む父の姿を覚えています。

 しかし、まだ外食券があると5円か10円安くなる時代でした。蜆汁だと喜んでよく見たら自分の目が映っていたのだったなどという冗談が通用した薄いみそ汁が12円、外食券なしのメシが11015円、おかずつき1食が30円前後、1日の食費が100円、1か月の食費が3000円という時代でした。100円出すとナイフ、フォークで洋食らしきものが食えました。

 姉と結婚する前の義兄を学寮に泊めたお礼におごってくれたのがチーズグラタン。250円出すとこんなにうまいものが食えるのかと感激した覚えがあります。小学校6年の時担任だった先生を訪ねて大学1年の夏休みに北海道に行ったとき、1万円で1か月乗り放題の国鉄の切符を買ってゆきましたが、冷夏の北海道は食うものがなく往生しました。


 先生に釧路で160円のラーメンをご馳走になりましたが、晩御飯代わりに十分満足し、世の中にはうまいものがあるのだと、オーバーに言えば「生きる喜び」を知った最初の経験でした。そうです。当時は腹いっぱいメシが食えることが何よりも幸せなことであり、快適で便利になれば人は幸せになれるんだと単純に信じられた時代でした。

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