2015年9月17日木曜日

本当のホスピス

本当のホスピス

 ブログの第3号で、ターミナルケア病院の「早く楽に死なせる」仕組みを書きましたが、もともと、終末期に痛みで苦しむことが多かったガン患者の終末期介護(terminal care)をするホスピス(hospice)が始まりです。

 日本では、大阪の淀川キリスト教病院に、1973年に柏木哲夫さんが開いたのが最初です。私も柏木先生から直接お話を聞き感激しましたが、もともとは中世ヨーロッパで巡礼者をもてなす教会の宿泊施設が始まりだそうです。

 病気で動けなくなったり、そこで亡くなったりしても、ちゃんと介護や死後の始末を聖職者が献身的にしてくれたのだそうです。ホスピタリティ(hospitality:親切なもてなし)という言葉や、病院のホスピタルという語もここから出たのだそうです。

 それが一部とはいえ、痛みを取り、早く死なせて上げる病院になってしまっているようで、実に情けない思いがします。しかし、本来のホスピスの精神を引き継いだ小さな診療所が私の故郷・鳥取市にあります。「野の花診療所」と言います。院長は徳永進さんと言います。

 もと鳥取日赤病院のお医者さんでしたが、患者さんのことを本気で考える人で、NHKのドラマの主人公のモデルにもされた方です。
 わずか19床の個室だけのちいさな診療所ですが、次の三つの言葉を掲げています。

人の悩みから出発する
患者さんの希望と選択を支える
昼の雲、夜の星を大切にする

 この③の意味は、あの昼か夜かもわからなくして、最後には生きているのか死んでいるのかわからなくするのと全く反対の立場で、どんな重症の人でも意識があれば、今日は雨ですよと窓をちょっと開けて外の雰囲気を感じてもらう、自然の中で生かされていることを肌で感じてもらい、今日も一日生き抜こうという気力を引き出すのだそうです。徳永先生ご自身からお話をお聞きして、これにも感激しました。

 ほかにも「死に向き合う為の診療所でありたい」、「生への希望を追うことと人生を振り返って懐かしむことの両方を成立させたい」、「良い日を過ごしたいと思う人に利用していただければ有難い」、「最後の日々を家で過ごすと決めた患者さんと家族を支えるのがこの診療所の使命だ」「いくつかの問題を解決すれば家での良い日は作ることができる。

 それを支えるのを『ホスピス運動』と呼び、これが広がることを願っている」などと書いていらっしゃいます。是非ホームページを見てください。これが本当のホスピスだと思います。

 実は私は老妻を老々介護中です。19年前にクモ膜下出血をして、自発呼吸が止まり、死を待つばかりになったのです。手術をしても大半は手術中に死ぬことが多く、成功してもひどい後遺症が残ることが多いので、手術はしないのが普通なのだそうです。

 それを無理に手術してもらい、奇跡的に軽い後遺症で済んだのです。でも加齢とともに様々な後遺症が出てきました。記憶障害、片目失明、嚥下障害、ふらつきなどで要介護二です。「障害が重くなり、手に余るようになって来たらお前は彼女を安楽死させたいか?」いつもその問いを突き付けられていて、今のところ「ノー」と言えています。しかし、本当に最後まで言い切れるか?と私は誰かから問い続けられているような思いでいます。

 生きることの意味を色んな人から聞くような機会もできないかなと考えて、色んな方のご意見をうかがっているところです。

0 件のコメント:

コメントを投稿